Day: June 12, 2013

源氏物語絵巻の柏木から御法:華やかの内には生と死の深み

源氏物語は日本の四大絵巻の一つであり、国宝である。現存の十九巻から、柏木、横笛、鈴虫、夕霧、御法五巻を取り上げたいと思う。この華やかな五巻から、源氏物語の生と死の重いテーマを考えたいと思う。

 

源氏物語絵巻は女絵系統に所属する。詞書の料紙は五彩の染紙に金銀箔や砂子を散らし、顔料を使って部分的に文様をあしらあしらい、平安時代独特の装飾をこらしている。料紙に草仮名で書くのも女絵の特徴である。源氏物語絵巻では、天地が二十一・九糎ほどの小ぶりの寸法の料紙が使われた。濃厚な色調が使われ、画面のすべてを余白を残さず塗りつぶしている。

そして、源氏物語絵巻は大和絵を代表するテキスト。九世紀末、大和絵は唐絵に拮抗して成立する。唐絵の漢字に対して、仮名を用いた。

大和絵の技法の代表するのは、「作り絵」「吹抜屋台」「引目鈎鼻」という特性である。京都国立博物館の『特別展覧会 源氏物語の美術』 の「引目鈎鼻」の解釈は、「目は一筋の線、鼻は鈎形で示した最も単化した描法。」である。この描法の特徴は喜びや悲しみなどの表情の動きが見られないことである。

 

源氏物語絵巻は五種に分け、その中の第一種群は柏木、横笛、鈴虫、夕霧、御法である。 『特別展覧会 源氏物語の美術』によると、第一種群は最も代表的なすぐれた画面であり、「先づ色調の豊かな美しさは、いかにも王朝的な典雅な趣きがある。そして人物や調度品などの配置はひきしまった緊密な構図で整い、しかも全体的に無限的な情緒が感じられる。」

しかしながら、柏木、横笛、鈴虫、夕霧、御法の五巻はこんな華やかな絵巻の中核的な部分でありながら、表現している物語は源氏物語の中で光源氏の晩年の陰り。この部分では、女三の宮の出家、柏木の病死、紫上の病死など暗い話題が多い。一方、女三の宮と柏木の不倫で誕生した嬰児、薫の五十日の祝いも描かれている。源氏物語の生と死の深みは絵巻で表現されている。

 

柏木から御法までの柏木グループについて、『源氏物語絵巻の謎を読み解く』は「 柏木グループのみに、画の指示をしている指図が記入されている。絵を指示した上流貴族たちが強力に画面制作に関与したことがうかがえる。従来以上に特性のある画面を制作しようとする意志が読み取れるのである。」と述べていた。柏木グループの仕事は光源氏の晩年の静かな敗北と諦念の世界を取り上げ、その内面にわだかまる思いを見事に形象化し、掬い上げることで、より華やかな巻々を選んだグループに逆に差をつけようとする試みに見てもよい。

 

以下では柏木から御法の五巻の絵巻を一つずつ、絵巻から見せる物語の世界を分析したいと思う。

柏木一・二・三は女三の宮の出家、柏木の遺言と薫の五十日での祝いの場面を描いている。柏木一は朱雀院、光源氏、女三の宮を集め、几帳の裏でそれを見て悲しむ女房たちの姿を反対側に集めて描いている。画面の中央部分を境目にして、画面の世界が二分されている。この画面において、几帳と畳の縁とが平行に描かれていないことが「三人三様の交わらない複雑な心のずれを表す」という評論がある。(『国宝「源氏物語絵巻」を読む』)俯瞰描写は複雑な局面を示している。柏木二では、柏木が瀕死でも、冠をつけ、少し体をおこして夕霧を迎えている場面が描かれている。柏木三は薫の五十日での祝いで、「光源氏はまっしろの産着をきて、自宅にいながら直衣姿であり、烏帽子ではなく冠をかぶっている。仕えの女房たちは裳唐衣の正装である。」(『きもので読む源氏物語』)

横笛の絵巻が選んだ場面は夕霧と雲居雁の夫婦喧嘩の場面で、若君に乳をふくませる雲居雁とその様子をうかがう夕霧である。夕霧の家族が描かれて、死にゆく父柏木、出家を望み現世を捨てようとする母女三の宮、残された子供という崩壊の家族と相対する。

鈴虫では、出家した女三の宮と、源氏と冷泉院の対面の場面が描かれた。

二つの絵が伝わった感傷が共感できる。

夕霧の巻では、夕霧と雲居雁の夫婦喧嘩の場面が描かれた。夕霧が読む文を、雲居雁が奪い取ろうとする場面である。女房たちが障子の前で聞き耳を立っている。引目鈎鼻故に表情はよく読めない。

御法では、病に臥す紫の上と悲嘆に暮れる源氏と夕霧が描かれている。庭で萩、薄、女郎花が吹きすさぶ風に乱れなびいている。紫の上と源氏の別れの場面が一層悲しみ滲む。

源氏物語絵巻のなかの柏木から御法の五巻は最も華やかな部分だと評判されたが、その中に生と死、喧嘩と別れの場面が描写され、実に深みと重みが感じられる。

 

 

あとがき

レポートをまとめて、源氏物語、そして源氏物語絵巻はやはり素晴らしい作品だと改めて感じた。アメリカの大学で源氏物語を英語で勉強したが、今回絵巻を通して、新しい認識ができた。絵巻があるだからこそ、平安時代の想像がつける。源氏物語の約百年後で描かれたものだから百パーセント信じることも危険だと資料の中に書いてあるが、平安時代の物語を理解することに助けることは確実だ。今回は現存の源氏物語絵巻が見たくて五島美術館まで行ってみたけどちょうど展覧中になっていないので残念でした。機会があれば名古屋の徳川美術館に行ってみたいと思う。

そしてこの講義について、本当に大変勉強になりました。OYRとして、日本の文化にもっと深く理解した。私は中国人として、心の中で日本の絵巻を中国の絵巻と比較するのは自分一人の楽しみでした。とくに絵巻は非常に面白かったと思った。昔の中国は日本人からはこう見られていたのだと感心したところはいくつあった。たとえば皇帝の王座に鳳凰紋様の絹を飾ることは中国人から見るとは龍は皇帝の象徴で鳳は王妃の象徴という常識とはかなり違う。

 

 

 

参考文献

 

奥平英雄・『源氏物語絵巻』・ 保育社・1985

尾崎左永子・『光源氏の四季 王朝のくらし』・ 朝日新聞社・1989

清水婦久子・『国宝「源氏物語絵巻」を読む』・和泉書院・2011

近藤富枝・『きもので読む源氏物語』・河出書房新社・2010

京都国立博物館・『特別展覧会 源氏物語の美術』・日本経済新聞社・1975

三谷邦明、三田村雅子・『源氏物語絵巻の謎を読み解く』・角川選書・1998

 

六本木ヒルズ 森美術館 LOVE展

5月27日

六本木ヒルズ 森美術館 LOVE展

 

源氏物語絵巻(2005~2007  模写)

第三十六巻 柏木 一・二・三

第四十九巻 宿木 一・二・三

 

今回森美術館は60周年を記念し、「愛」をテーマにしてLOVE展を開けた。さまざまな形の芸術品のなかで、私は源氏物語絵巻の模写を見つけた。暗い部屋の真ん中で六つの絵巻が一紙の形で別々で額縁に入れて、全部ガラスのショーケースに入っている。模写は初めて見たので、模写の絵巻はそんなに古くに見えるのはすごく不思議だと感じた。本の画像のほうが鮮やかで綺麗でした。

 

柏木

一、朱雀院、源氏と女三の宮三人の気持ちは複雑であることは以下のところで表れている。主人公の三人の顔を互いにそむけさせる、俯瞰視点は高い、そして畳の縁と几帳は平行に描かれていない。

二、柏木が瀕死でも、冠をつけ、少し体をおこして夕霧を迎えている。目を閉じた柏木を見て、告白を終えて安心したことが感じられる。

三、薫の五十日の祝い。気になる所は、源氏を上部ぎりぎり画面の枠に押し付けること。この絵から、源氏の孤独を感じられる。

 

宿木

一、帝が碁を打ちつつ薫に結婚を勧める場面。

二、匂宮と六の君との三日夜の儀の翌日に寄り添う姿。画面は屏風と几帳で区切られ、右には匂宮と六の君で左は女房たち。女房たちは裳唐衣の正装を着ていて、左下の女房の視線はこちら側を向いている。先に右の新婚夫婦の姿を見て憧れの気持ちが出る時に、左下の視線に気づいて現実に引き戻された感じが出た。

三、匂宮は琵琶を弾いて、中の君は匂宮から顔をそむける。左には秋草が風に揺らぐ。そして御簾のたわみによって表わされた風が淡い物哀れを誘う。中の君の後ろ見のない結婚をしてしまった苦しみが表されている。

 

画面の表現以外に気づいたことは、服などの紋様。平安時代の文化の記録としては素晴らしいと思う。

 

これは「愛」がメインテーマの展覧会で、どうしてこの二つが選ばれたんたろう?と私は考えました。柏木が表したのは、(柏木の)許されていない愛、そして死ぬまで途絶えない愛。宿木が表したのは、夫婦の愛。