日本の伝統芸能 I:落語

 「落語」とは日本の伝統的な話芸の一つで、日本のスタンドアップコメディといったところだ。落語は洒落や冗談やユーモアが様々な人物の会話スタイルで行われるはなしで、そのはなしを寄席で演じる人々は「はなし家」とか「落語家」と呼ばれている。

落語が江戸時代(1603-1867)から始まったと考えれているが、落語の起源は、13世紀前半頃に書かれた中世日本の説話物語集である「宇治拾遺物語」に遡ることができるそうだ。その後、町人階級の出現で、落語は江戸時代に下層階級に広がって、庶民にも親しまれるようになった。

落語家の舞台は「高座」と言い、そこには座布団しかないが、その上に一人の落語家が正座し、扇子と手拭を小道具に、様々な声や身振りを使ってはなしを演じる。落語家が講談などの既製の演目をアレンジしたはなしを演じることが殆どだが、他の作者に書いてもらったはなしや自作のはなしを演じることもある。

一般的な落語の内容は聴衆をあっと言わせたり、わっと笑わせたりするものである。はなしの最後は「落ち」と呼ばれて、大抵ドンデン返しがあり、聴衆をびっくりさせる部分が落語のハイライトである。これは落語の一番落語らしいあり方であると考えられている。その後、落語家は自分の背中を聴衆に見せないで、寄席から素早く出て楽屋へ引き返す。

落語は現在東京や大阪でよく演じられているが、落語を知らない日本人が多いそうだ。他の日本の伝統芸能とは異なり、落語は様々な小道具や衣装が必要ないので、聴衆にアピールできるような派手なものではないが、それ故に、聴衆の想像力を引き出す落語家の技が問われるシンプルさが落語の魅力なのではないだろうか。

One thought on “日本の伝統芸能 I:落語

  1. Masa Takahashi

    江戸や明治に作られた同じ話が、演者や時勢によって微妙に味付けが異なるというのも古典落語の面白さだと思います。「クラシック」という名前がつくものは、音楽でも演劇でも、洋の東西を問わず同じかもしれませんね。

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