Category Archives: 翻訳・通訳・ローカリゼーション管理

English Preparation for Translation & Interpretation (EPTI)

English Preparation for Translation & Interpretationは毎年7月上旬から8月上旬まで開講する6週間の英語集中プログラムです。 このコースはエプティ(EPTI)と呼ばれ、 通訳・翻訳専攻予定の学生のためにカリキュラムが組まれています。午前8時半から12時までのクラスにはWritten/Oral skillsとCultural Contentがあり、Written/Oral skillsでは通訳・翻訳についての理論や基礎を学びます。Cultural Contentでは通訳・翻訳には欠かせない経済、金融、法、国際機関などをテーマに、ニュースや新聞等を教材にしてプレゼンテーションやディスカッションを行い、総合的な英語力を強化します。午後1時から2時半までは、隔日で発音のクラスと経験豊富なMIISの教授によるT&I(Translation & Interpretation) ワークショップがあります。

出願時の早期診断テスト(Early Diagnostic Test)の結果が若干基準に満たなかったか、英語圏での留学等の経験がほとんどない場合、EPTI受講を条件にMIISに合格した学生がこのプログラムに参加します。EPTIに試験はありませんが、秋学期からの大学院に進むためには合格点以上の成績を修める必要があります。

私自身、昨年7/5~8/12まで EPTIを受講しました。MIISに来るまで英語圏への留学経験が全くなく、大学を卒業してから5年近く経っていたので、EPTIでの6週間は大学院生活に備えるための貴重な時間となりました。クラスメイトは中国人10名、台湾人2名、韓国人と日本人各1名の計14名でした。実際のT&Iプログラム同様、中国勢に押され気味でしたが、彼らのガッツに頭が下がる毎日でした。幼稚園~大学まで純日本の教育を受けた私は、とにかく人前で話したり意見を言うことが苦手で、ほぼ毎日あったディベート、ディスカッション、そしてプレゼンテーションに緊張の日々でした。毎日の課題も決して少ないとは言えず、土日も宿題に追われていましたが、EPTIで学んだ通訳・翻訳理論や国際機関等についての背景知識がT&Iでの実際の授業で非常に役に立っています。

2012年秋入学のMIIS独自の奨学金選考対象となる出願締め切りは3月12日です。英語力に自信がなく、MIISのT&Iへの出願を迷っている方がいましたら、まずはアプリケーションを提出し、早期診断テストを受験されることをお勧めします。テスト結果が若干基準に満たない場合でも、受験者の英語力以外(職務経験等)で合否を判断し、英語力の向上を条件に合格する可能性もあります。また、毎年優秀な通訳者・翻訳者を輩出する学校として、MIISではEPTIだけでなく、T&I以外の学科専攻予定の学生のためのEnglish Preparation for Graduate Studies英語集中プログラム(ESL) など定評ある様々な語学プログラムを提供しております。ですので、T&Iに出願する前に英語力を高めたい方にもぴったりなプログラムが見つかるかと思います。

今年のEPTIは7月2日~8月10日に開講予定です。費用・受講方法などの詳細についてはMIISのホームページをご確認ください。

Fall Forum 2011

こんにちは、森田系太郎と申します。ここモントレー国際大学院のT&I(Translation & Interpretation)日本語プログラムの2年次に在籍しており、CI(Conference Interpretation;同時通訳)を専攻しています。

このブログ上では繰り返しになるかも知れませんが、T&Iのプログラムはさらに4つの専攻に分かれています。TLM(Translation Localization Management;翻訳ローカライゼーション管理)、T(Translation;翻訳)、T&I(Translation & Interpretation;翻訳と通訳)、そしてCIです。

このCIまたT&Iの学生のうち希望者が2年次の秋に経験するのが Fall Forumです(ウェブサイトはこちら:http://sites.middlebury.edu/fallforum2011/)。希望者は、100人以上の収容空間を有すると思われるIrvine講堂で2分程度の逐次通訳を行うことになります。したがって当大学院ではプロの通訳者になるための一種の「通過儀礼rite of passage」の1つとみなされています。または「度胸試し」と言って もよいでしょう。

僕も参加した2011年のFall Forumは11月18日(金)の14時から18時にかけて開催されました。昨年のテーマは「性教育」と刺激的でしたが、今年のテーマも刺激的で “Are You Really Free . . . ?”でした。つまり「あなたは今、本当に自由ですか・・・?」。Forumの紹介文には次のようにありました。

“Many of us take freedom for granted as a universal right, but the struggle for freedom has caused countless conflicts, and even war.”(私たちの多くは自由が1つの普遍的権利であると当然のことのように考えています。しかしこれまで自由を獲得するための闘争によって数知れぬ紛争、時には戦争まで生じています。)

日常生活を何気なく送っていれば問いかけることを忘れてしまうような、虚を突くようなこの命題。これをめぐって3つのセッションが開かれました。

3つのセッションとは「第1セッション:移民」「第2セッション:新しいテクノロジー」「第3セッション:ジェンダー(性)役割」です。当大学院に在籍する様々 な経歴・職歴を持った教員・学生にスピーカーとなってもらい、各テーマについて自国の言語で語ってもらいます。そして参加を決めた通訳を学ぶ学生は通訳者としてスピーチを聞き、ノートを取り、聴衆の前で通訳を披露します。

日本語話者のスピーカーが登場したのは第2、3セッションでした。第2セッションのスピーカーは本校MBAコースに在籍中の日本人留学生で、約1年前に発生した未曾有の災害「東日本大震災」の際にFacebookやTwitter といった新テクノロジーがいかに役立ったのかを、震災当日を振り返りながら話してくださいました。それを日本語プログラムのT&IとCIの学生1人ずつが逐次通訳を行いました。

一方、第3セッションのスピーカーはT&I在籍の日本人留学生で、日本のメディアにおいて同性愛がどのように扱われているのかについて意見を述べました。その後、CIの学生2人が逐次通訳を行いました。この学生2人のうちの1人が僕でした。

当日、自分の出番になるまでは「演台では緊張するかな・・・」と不安を抱えていました。しかし実際始まってみるとノート取りに夢中になり、その結果、それほど緊張しなくても済みました。しかし授業や友人との練習とは異なる大舞台での通訳ということでうまくノートが取れず、最後の方では一時、間が空いてしまってヒヤッとした場面も。ですが最後は何とか無事終わらせることができました。

毎年、このFall Forumでは極度に緊張してしまってまったく通訳ができなくなってしまう学生や泣き出してしまう学生が1人は出るそうです。しかし今年はそのような学生は1人もおらず、全体的に成功裡に終了しました。

尚、僕は通訳に加え、第2セッションの司会を務めるという機会にも恵まれました。司会は日本語で行い、CIの学生1人が通訳を担当しました。僕も東京で震災を経験し、 また仙台出身で震災時に家族が仙台にいたということもあり、震災の際に新テクノロジーがいかに効果を発揮したのかについて少し話させてもらいました(司会の様子は写真を参照)。

このブログをお読みの皆さんはモントレー国際大学院への入学をお考えの方が多いと推察します。もしCIもしくはT&Iとして入学された場合にはぜひこのFall Forumへ参加してみてください。素晴らしい体験、つまりプロの通訳者になるための度胸がきっとつきますよ。この意味でFall Forumはまさに通過儀礼なのです。

入学までにしておいた方が良いこと

みなさん、こんにちは。T&I一年の棚田周子と申します。私は日本の大学を卒業後、東京で3年、ワシントンD.C.で2年、計5年働いてからモントレー国際大学院に来ました。このブログを読んでいる方は、MIISの通訳・翻訳プログラムに興味があり、すでに出願した、もしくは将来出願を考えている方が多いかと思います。今回は、日本語T&Iプログラムを志望している方のために、入学までにしておいた方が良いことについて書こうと思います。

●母国語の強化

英語ネイティブは日本語、日本語ネイティブは英語の勉強にどうしても重点を置きがちですが、母国語が最も大事であることを忘れてはいけません。外国語を勉強している方であれば、一度は聞いたことがあるかも知れませんが、母国語以上に外国語が上達することはありません。英語も日本語も中途半端なままでは、プロの通訳者・翻訳家としては話になりません。特に日本人の留学生は、出願前はTOEFLやIELTSの勉強に集中してしまいがちですが、日本語の新聞の音読やテレビニュースを見るなどして、日本語力の強化に励みましょう。お勧めの勉強方法の一つとしては、朝日新聞の天声人語を毎日書き写すことです。ご存知の方も多いかと思いますが、天声人語は知識・文章力の向上に役立つとよく言われています。私も大学受験の時や、就職活動のときに天声人語を書き写すようにと言われた覚えがありますが、結局モントレーに来てから、天声人語の書き写しを始めました。課題で忙しい時もあるので全文写すのは大変ですが、 出来るだけ毎日全文書き写し、音読するようにしています。 全文でなくても、毎日5分間、1年続けると効果があるそうです。これは英語ネイティブの日本語力強化にもお勧めです。

MIISのホームページには、入学までの語学力の高め方について書かれたページ(「10 Ways to Prepare」)がありますので、そちらも参考までにご覧下さい。

●背景知識

通訳者・翻訳家にとって背景知識は非常に重要です。世界情勢を知っておくことはもちろんのこと、政治、経済、テクノロジー、医療など、ここでは挙げきれないくらい多くのトピックを取り扱います。私自身、MIISに入学してから実際の授業で「もっと背景知識があれば…」と痛感することが多々あります。自分の好きな分野はもちろんのこと、苦手な分野についても雑誌や本、ウェブサイトなのでパラレルリーディング(日本語英語の両方で同じ内容のものを読んでみる)すると非常に勉強になると思います。実際、入学後は課題で忙しく、課題以外の勉強時間を見つけるのが非常に大変です。余裕のある入学前に色々な分野の背景知識を身につけておくと、入学後に役立つかと思います。また、日本語と英語では単位換算や数字の表現が違うため、特に通訳の際には苦労します。早いうちに温度や長さ、距離などの単位換算をマスターし、数字表現を自由自在に言えるようにしておくと楽です。さらに、各国首脳・首都や大洋の名前を覚えることと、国際機関などについて勉強しておくこともお勧めします。

●職務経験

必ずしも職務経験は必要ではありませんが、今年の日本語T&Iの1年生を見ると、大学卒業後2〜3年以上の職務経験がある学生がほとんどです。私は、大学卒業前に「将来通訳・翻訳を勉強する」と決めていたのですが、多くの方から色々な経験があった方が通訳者・翻訳者としての幅が広がるとアドバイスを頂きました。そこで、日本の企業に就職し、転職して海外で働き、大学院に留学するという計画を立てました。実際、大学卒業後は東京にある企業で1年半働き、その後アメリカのワシントンDCにある日本政府機関で2年働き、帰国後は東京の特許法律事務所で1年半働いてからモントレーに来ました。ワシントンD.C.と特許法律事務所では、専門知識や通訳・翻訳業務に通じるスキルを身につけることができましたが、それ以上に、一番最初の会社で日本のビジネスマナーを叩き込まれたことが本当に役立っていると思います。MIISに入学した時点で、先生方は学生のことを「将来の同僚」として見ています。将来の通訳・翻訳のプロとして、時間に正確であることはもちろんのこと、言葉遣いであったり、メールのマナーであったり、些細なことが重要視されています。特に、日本のビジネスマナーは他国に比べて厳しいですが、通訳・翻訳の世界では好まれるマナーだと思います。本で読むよりも、チャンスがあれば実際に働いて、経験してみる方が色々な意味で勉強になると思います。

ここにあるアドバイスはほんの一部にしか過ぎませんが、参考になれば幸いです。すでに出願した方も、これから出願する方も、将来MIISの一員として、みなさんにどこかでお会いできるのを楽しみにしています。

Localization(ローカリゼーション)とは一体なに?

こんにちは。私は翻訳・ローカリゼーション管理専攻一年のイーラムです。
香港出身で、アメリカ生活はちょうど8年目を迎えました。日本語学習歴は約12年です。、時々、自分が英語・日本語の翻訳・ローカリゼーションプログラムにいることを考えると、不思議に感じています。。。

さてさて、翻訳と通訳はよく耳にしますが、「ローカリゼーション」とは何でしょう?

MIISに受かった後、よくあったパターンはこんな感じでした。

イーラム:「やった!念願の大学院に受かった!」
家族/友人/上司/取引先:「おめでとう!で、イーラムは何を勉強するの?」
「翻訳とローカリゼーション管理」
「。。。。え?何それ?」

全然知られていなくてとても寂しいです。。。

ローカリゼーションとは、単純な「翻訳」ではなく、対象となる市場の言葉と文化を考えながら「地域化」することです。例えば、自転車(bicycle)を中国語に翻訳すると言っても、地域によって少し違う言葉が使われています。
例えば…
中国:自行車
香港:単車(漢字は少し違いますが)
香港の人は「自行車」でも分かりますが、違和感を感じます。「自分の言葉ではない」と感じ、その翻訳された言葉にあまり共感できません。意味が通じても、「共感」がないと、いくら「自行車」をプロモーションし、売ろうとしても、成功は難しいかと思います。世界中に、このようなケースは実は多くあります。例えば、スペイン、メキシコ、アルゼンチンで使うスペイン語、それぞれ少し違います。

「ローカリゼーション」は「言葉の適切さ」だけではなく、色々な配慮も必要です。例えば、ウェブサイトなら文字の配列、長さ、読みやすさ、単位の変換(日本円から米ドルなど)、デザイン、文字の色なども考えなければいけません。もちろん、まず根本的翻訳される言語のマーケットに合う商品を作らなければならないケースも多いでしょう。日経ビジネスで結構興味深い記事がいくつありましたので、ご紹介します。

1.「マルちゃんする」とメキシコで独自解釈されたカップ麺
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20101013/216622/

2.世界各地で何が売れるか、“目的地”を示す「地図」が必要だ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20101013/216615/

MIISでは、翻訳とウェブサイトやソフトウェア等のローカリゼーションがメインですが、ビジネスクラスのコース(会計、マーケティングなど)も必修です。さらに、3年で翻訳・ローカリゼーション管理修士号とMBAを取得することも可能です。2年しか時間がない場合、MBAの代りにBusiness Foundation Certificateを取るのもいいアイデアかもしれません。

さて、期末試験はもうすぐです。無事に乗り越えるように、日々翻訳と論文を頑張っています。。。ではでは!